〜研修同期・先輩たち〜
国立能楽堂の研修制度が始まったのは1984年だそうで、ちょうど私たち八期生が研修中に25周年を迎えました。
20数年前の最初の頃に研修生であった先輩能楽師の方々は、すでに私たちの親に近いくらいの年齢、今の研修生からみたら私たちもすでに結構な年なのかも…研修制度がこうして続いていることを考えると、感慨深いものがあります。
研修中は稽古を同期の研修生と一緒に受けるか、自分の流儀の稽古については師匠と一対一がほとんど。休憩中や発表会の時に能楽の先輩たちと触れ合う機会があります。
研修生も、先輩方も最初はお互い未知との遭遇といった感じで、まずは挨拶と自己紹介から…フランクに接してくれる方もいれば、未だに近寄りがたい方も。
私の場合、流儀の兄弟子にあたる人は研修生出身ということもあり緊張せずに接することができました。また、狂言方やワキ方の同期にもそれぞれ流儀の兄弟子に研修修了生がいたようです。これは研修生を続けていく上ではとても心強いこと。
兄弟子・姉弟子が多い流儀では人間関係に気を使うこともあり、逆に少ない流儀では先生のお手伝いの仕事が多く…どちらが良いのかはわかりません。
かつて、国立能楽堂の研修制度が始まったころは、昔ながらのやり方ではないため反発も多かったそうです。能楽師の多くは、親が能楽師だったため家業を継ぐ、あるいは弟子入りして書生として修行を積む、というパターンでした。
今でも圧倒的に多いのはそちらの方ですが、能楽師の家ではなくてプロを目指した人たちは数十年前よりは多岐に富んでいるようです。
とにかく、私達が研修生として入った頃に研修出身者が一定数居たことは幸運でした。
自分がまだプロになれるかどうか、不安の最中にいる時にそうした先輩方の研修生時代の話を聞いて勇気づけられたり。先輩方の活躍する舞台を観て、自分もいつかそうなりたいと思ったり。
そして、研修同期生。
ワキ方、狂言方の同期の研修生とは普段から、すごく仲良くしているわけではなかったのですが(そもそも私は稽古が終わるとバイトしていたため、あまり時間がなかった)今でも楽屋で顔を合わせると嬉しいですし、あの稽古三昧の日々をお互い過ごして今があると思うと、「向こうも頑張っているから、自分も頑張ろう」という気持ちになります。
同期も、先輩方も、そして先生方でさえ舞台の上では、そして芸の上ではライバルです。でも、それ以上に仲間でもあると思います。
仲間がいるというのは、良いものです。