〜支給品・奨励金貸与について〜
能楽研修生として国立能楽堂に通い始めた後の流れとしては以下のようになります。まず半年間稽古して適正試験で自分の流儀が決定し、そこからまずは2年半が基礎研修。
その後3年が専門研修といった感じで稽古会を見学し、やがて自分も出させてもらい…大体研修生の1年目が終わるころに始めて舞台に立ちます。
適正試験が終わったころから研修生には「奨励金」として月々一定額のお金が貸与されます。他にも、浴衣や袴、黒紋付き、謡本、扇などの支給があります。
八期の場合着物や謡本については、新品かあるいは以前の研修生が使っていたものをもらいました。新品はもちろん嬉しいですが、謡本などに以前の研修生がつけた印や勉強のために書かれたであろう書き込みを見つけると「どんな研修生だったのかな」を思いを馳せたり…。
大学で多少触れていたとはいえ、プロになるための稽古ということで謡も囃子も私にとって殆ど未知の世界。四苦八苦して節を覚えようとしている自分と、かつての研修生の姿が重なります。
でも、私が引き継いだということはこれを使っていた人は研修生を途中で辞めたということ…。
そう、貸与された奨励金も、支給された着物や道具も、途中で研修生を辞める場合はすべて返却しなければいけません。
前回「奨励金を生活費に使わないように」と事務の人からアドバイスされたと書きました。本来は道具(自分の小鼓など)やその他舞台で必要なものが支給品以外で出た時のために奨励金の貸与があるそうです。
そして、奨励金の全額の返済が不要になるのは、研修を修了して数年間能楽師として活動した場合。例えば研修2年目や5年目で辞めた場合、貸与された奨励金の一括返済、あるいは分割返済(利息付き)が求められます。
このことは、研修を始める前に説明されるのですが「自分は絶対辞めない、プロになる」と思っていたのは最初は皆同じはず。
6年という長期間そのままで行けるかどうかは、本人の頑張りだけでなく、運や周りの協力もあると思います。