鼓を仕事で打っている、というと「あの、ポンポン鳴らすやつでしょう」と言われることが結構あります。
そして、初めて鼓を体験する人からの意見で多いのは「なかなか鳴らない、思ったよりも難しい」ということ。
お稽古を始めてしばらくは、「あまり音に神経質にならないようにしましょう」とよくお話をします。
実は、小鼓の音を綺麗に出すのはとても難しいです。
打ち方や調べ(紐)の緩め方、締め方、タイミング。そして、何より鼓によって音がそれぞれ違います。
「お稽古用の鼓はどこに行けば買えますか?」と最初に聞いてくる方もいらっしゃいます。
合成の体験用の鼓もありますが、本物の革でできた小鼓はどこに行けば必ず決まった値段で購入出来る、ということはありません。革によっても値段が違うし、そもそも作りたての新革は鳴りません。
作られたばかりの真っ白な小鼓の革が、飴色になるには何十年の年月がかかります。
飴色になった上質な小鼓の革が、それに合った筒と組んで、丁度良い湿度の環境できちんと打つと素晴らしい音がします。若い革も季節によって良くなりますが、年月を経た革の方が音が丸く柔らかい。
「ああ、良い音だなあ」としみじみ思える音です。
そんな音をいつも響かせたい‥と思いながら乾燥するこの2月、四苦八苦している日々です。