小鼓草子2020

小鼓方観世流能楽師岡本はる奈のブログです。舞台・ワークショップ・稽古場案内と日々の出来事など。横浜、相模大野、東京杉並区にて小鼓指導しております。フランス語版ブログhttps://notesdunkotsuzumi.blogspot.com/

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能楽研修生だったころ㉓

〜23 三十路を控えて〜

 能楽の研修生は、時期はまちまちのようですが基礎研修修了後に能楽協会に入会することになっています。四年目に入り、私たち八期の研修生は揃って能楽協会へ新規会員となりました。

能楽協会員になるためには、能楽協会所属の先生二名の推薦が必要で、登録されれば協会名簿に名前が記載されます。

 能楽協会以外にも東京の囃子方ならば東京囃子科協議会、もう少し上の先生方が入っている日本能楽界、狂言ワキ方も流儀によって独自の会をつくっているところもあります。

 とりあえず、その頃の私の認識としては若輩者とはいえプロの能楽師として名簿に登録されたということでした(能楽協会に入らずに活動する能楽師も一部いらっしゃいます)。

 これに少しは励まされつつ……個人的には目の前に『三十路』の二文字が迫ってきておりました。

 能楽の世界では70,80の先生も多くいらっしゃるし、30〜40代でそれほど違いは感じません。今思えば三十歳になるくらい、なんだ!という気持ちですが外の世界に出れば、学生時代の友人たちもそれぞれがキャリアや生活での節目を迎えておりました。

 能楽界では、東日本大震災の追悼公演や東北支援のチャリティー公演などが企画・実施されており、自分自身はあまり変わらぬ稽古風景がだんだん戻ってきて、やっと一息ついた一年でもあり…きたる三十路に恐れおののいていた一年。

 肉体的にもがたがたしっぱなしの頃でした。特に私は、家族も腰痛持ちという遺伝的要素に加えて昔の部活動で靭帯を切った後遺症か、後見と楽屋働きが続く中で腰痛と足のしびれになやまされていました。ときどき稽古もおやすみしつつ、養成課で教えてもらった整体に通ったり、大先生の奥様に教えてもらったピラティスに行ってみたり。最終的にはヨガでかなり良くなったと思います。体調管理は年配の先生方にもそれぞれ「自分はこれ」というものがあるそうです。どんな仕事も長く続けるには健康が大事だとしみじみ思いながら二十代最後の年を過ごしました。