小鼓草子2020

小鼓方観世流能楽師岡本はる奈のブログです。舞台・ワークショップ・稽古場案内と日々の出来事など。横浜、相模大野、東京杉並区にて小鼓指導しております。フランス語版ブログhttps://notesdunkotsuzumi.blogspot.com/

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能楽研修生だったころ ㉗

〜27 修了公演〜

2014年の3月18日。「第3回青翔会・第八期能楽(三役)修了発表会」が、私たち八期の能楽研修生の修了公演でした。

 修了公演ということで、家族や友人、銀行員時代の知人にも案内を出したり知らせたり。平日の公演なので、お勤めをしている人には難しい日程でしたが多くの方にお越しいただき同期の二人とともに舞台を務めました。

 研修中のいつからか、私は「石橋を打ってみたい」という気持ちが強くありました。修了公演で半能という形であれ、それを実現させてもらえたのは流儀の先生方や指導の先生の尽力があったからです。

 研修を修了して何年もたちましたが、「披キ」の曲で女性の囃子方が声をかけられることは本当に少ないです。他の女性の囃子方が打つのを見ても、おシテを女性が務めるときのことがほとんどです。もしも修了公演で「石橋」を打っていなかったら、未だに私は打ったことがなかったかもしれません。

 そんな思い入れの強い「石橋」。半能は後半の獅子が出てきて舞うところを打つのですが、時間にして15分くらい。ただし、ものすごく体力を使います。修了公演が近づくにつれて、稽古とストレスでお腹を壊す……楽屋働き等で土日はほとんど潰れていながらも、細々とアルバイトも続けていたので、睡眠も不規則で不健康なことこの上なく、ただ食欲だけは健在で…軽い風邪や貧血にもよくなっておりました。

 そうして迎えた修了公演の、自分の出番が来るまでは楽屋にいる時間が長く長く感じていたのに、そして舞台の橋掛かりもいつも以上に長く果てしなかったのに、鼓を打ち始めてからは気がついたら舞台が終わっていました。

 六年間の集大成でなにか悟りをひらけたり、成長できた!と言いたいところですが、むしろ今まで以上に不安。でも「石橋」が打てたことは本当に嬉しい。そして途中で辞めることなく研修期間を終えられたことだけはほっとしていた記憶があります。