小鼓草子2020

小鼓方観世流能楽師岡本はる奈のブログです。舞台・ワークショップ・稽古場案内と日々の出来事など。横浜、相模大野、東京杉並区にて小鼓指導しております。フランス語版ブログhttps://notesdunkotsuzumi.blogspot.com/

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能楽研修生だった頃⑤

 しばらく放置していたテーマ。再開します。

 

〜アルバイトと住まいのこと〜

研修生の期間は、能楽の場合は6年。バレエやオペラ、文楽等など、ほかの研修所

の期間と比べても突出して長いです。能楽師の修行には10年は必要と言われているので、研修制度を開始したころは、これでも短いという意見も多かったそうです。とはいえ、国のお金=税金を使って育成するので長過ぎるという意見ももちろん(特に能楽以外の方から)あり、私が入った八期の研修からは指導の先生方との相談の上で5年で修了するという早期修了の処置も取られるようになりました。

さて、それだけの長期間研修生として稽古をするとなると、気になってくるのは当然お金と生活のこと。研修生は中学卒業の年齢からなることができますが、近年の研修生の傾向を見てみると能楽研修生を志す人は20代が多いです。私のように大学で出会って、能楽師を志したとかいうパターンも。

理想を言えば、実家あるいは落ち着ける住まいが都内にあって、親が夢を応援してくれて、稽古と舞台に関わる勉強に邁進して研修期間を過ごす…これが出来るにこしたことはありません。あるいは上京組でもアルバイトをしないで研修を続ける等。

でもでも、大学生の仕送り額の平均も年々減少を続け、有利子の奨学金を受けて進学する学生が多い昨今、なかなかそこまで恵まれた状況で夢をかなえる人だけではありません。

私の場合、銀行員をやめてまで夢を目指すということで家族からも「アルバイトくらいするのは当然。働かざるもの食うべからず」といわれる状況でしたし、能楽堂から支給される奨励金はあまり生活費に使うのは好ましくないという職員さんのアドバイスもありました(奨励金についてはまたお話したいと思います)

そういうわけで、最初は稽古のない夕方〜夜の時間帯でパン屋さんなどでアルバイトをすることに。

上京して学生だった兄弟とルームシェアして、アルバイトは週に3〜4日、平日の稽古と土日は舞台見学と…という感じでスタートしたのが4月のこと。住まいについては、今は一応寮制度というか、低価格で住める住居を紹介してくれるようです。私の頃はなかったのでうらやましい。

 

次回は奨励金についてお話したいと思います。

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ワークショップのパンフにかつての稽古風景が…左端が私です。