小鼓草子2020

小鼓方観世流能楽師岡本はる奈のブログです。舞台・ワークショップ・稽古場案内と日々の出来事など。横浜、相模大野、東京杉並区にて小鼓指導しております。フランス語版ブログhttps://notesdunkotsuzumi.blogspot.com/

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国立能楽堂の能楽研修生だった頃④

~適正試験まで~

 さて研修生として国立能楽堂に通い始めましたが、
実は選考試験の半年後に「適正試験」というものがあり、
ここで正式にどの流儀・どの役に進むのかが決まります。
研修生は最初の半年間の稽古で
「やっぱり立ち方(狂言・ワキ)になりたい!」と思ったり、
囃子方ならどの楽器にするか考えたり
という感じですが、実際はどの流儀に進むか大体決めていて
流儀の先生に挨拶したりしている人もいます。
 そのため、弟子入りしたとしてこの流儀のこの先生の元でやっていけるのか?
と稽古を受けながら考える期間になります。
他には能楽を本当に全然知らずに入ってきて、
やっぱり自分には向いてないかもと適正試験前に辞退する人もいます。
指導の先生の方でも、自分の流儀の弟子になるのでどんな人間かを見ています。
技術の面で、楽器等は向き不向きもあると思いますが、それ以上に
その流儀に入ったら、変えることはできないし先生とは一生の付き合いになるので。
ワキ方狂言方ですと一門の人たちと一緒に行動しますし
囃子方は先生の荷物持ちや楽屋手伝いから始まり
稽古に舞台にと普通の社会人の上司・部下よりも一緒の時間が多い。
むしろ家族ぐらい一緒にいる人たちもいます。
そう考えるとお互いにミスマッチは避けたい‥
というかミスマッチは双方かなり辛いです。

 さて晴れて適正試験に受かって初めて、
正式に「〇〇方〇〇流の研修生」ということになります。
適正試験後も謡や他の楽器の稽古等しますが
自分の流儀の稽古は俄然厳しくなります。
今までは「インターン期間」だったのが
「内定後の新人研修」になる感じです。
銀行員だったら、札勘や挨拶の練習からビシバシしごかれるアレですね