小鼓草子2020

小鼓方観世流能楽師岡本はる奈のブログです。舞台・ワークショップ・稽古場案内と日々の出来事など。横浜、相模大野、東京杉並区にて小鼓指導しております。フランス語版ブログhttps://notesdunkotsuzumi.blogspot.com/

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古い紙と英雄たちの香り。

 

 小学生の時の、図書室の一番奥にあったエリナー・ファージョンの「麦と王様」。短編集の最初に描かれていたのが作者の子供の頃の読書の体験でした。挿絵付きで語られていた本の小部屋のホコリと紙の香りが、読んでいる私の方にまで漂ってきそうで、放課後の教室の床に座ったまま夢中で読んだことを覚えています。

 実家の本棚にあった、古い本たち(ケースがついていて、ページが二段構えになっているものが多かった)は四隅が茶色く変色していて、乾いたわらのような少し甘い紙の香りをかぎながらページをめくっていました。

今住んでいるところの近くの図書館でも、古い全集などをめくるとかつて実家で嗅いだ香りとよく似た、でもやっぱり少し新しい香りがします。思うに、数十年前の子ども時代に読んだ本たちは母や祖父母が買って読んだものだったはず。年季の入りようが違ったのでしょう。

 そんなことを考えながら…この夏は少し古典を勉強しようと「平家物語」を借りてきました。漫画やあらすじ紹介、簡略版では読んでいたものの原文(注釈付き)をしっかり読むのは初めてです。

 と、いっても能の曲の中ではそのまま原文を謡に使っている箇所も多いのでなんだか「どこかでお会いしましたね」という感じです。

 謡曲の出典を突き詰めていくと、「和漢朗詠集」、さらには「白氏文集」あたりを最終的には読む必要が出てきそうですが……。

 とりあえず、坂東武者と公達、公家と武家のせめぎあいを紙の香りをかぎながら追いかけています。

 

 

 

 

 

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鹿ヶ谷の陰謀まで、読みました。