小鼓草子2020

小鼓方観世流能楽師岡本はる奈のブログです。舞台・ワークショップ・稽古場案内と日々の出来事など。横浜、相模大野、東京杉並区にて小鼓指導しております。フランス語版ブログhttps://notesdunkotsuzumi.blogspot.com/

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ワークショップと電車愛。

 今日は久しぶりに地元静岡県の、といっても県の東部にあたる御殿場にワークショップで伺いました(私の地元は県西部です)。

行きは小田急線のロマンスカー、MSEふじさん(旧・あさぎり)です。

電車が大好きなので、仕事でも遊びでも特急や新幹線、普通列車でも乗るとテンションがあがります。学生時代に青春18きっぷで実家まで帰ったことがなつかしい。

と、いうわけで帰りは三島から特急踊り子号に乗って帰ってきました。

新幹線でも、熱海乗り換えの湘南新宿ラインでもいいのだけど……踊り子号、あまり乗らないし!

現在は感染症対策でどの列車でも車内販売が中止なのでそれが寂しい。

早く、お弁当や飲み物を楽しみながら友人や家族と列車の旅ができるようになりたいですね。

「いや、車のほうが便利じゃん」という家族の意見もありますが(聞かなかったことにしよう)

 

ワークショップには学生時代の友人も来てくれて、帰宅後も友人の顔を思い出しながらひさしぶりに大学の頃の思い出に浸っています。

明日は水道橋で宝生流「春の女流能」にて能「志賀」を打たせていただきます。

 

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青いロマンスカーは格好いい。

 

能楽研修生だった頃⑬

〜社中会の着物〜

 研修生2年目から流儀の先生の舞台のお手伝いで能楽堂に出入りをするようになると、大変なことばかりでなく楽しいこともありました。

 社中会での働き(=楽屋で先生の手伝い)では囃子方地謡はプロ、主役として舞ったり謡ったりするのが、会を主催されている先生のお弟子さん(趣味として能楽をお稽古している方)たちです。1年間、あるいはそれ以上の間にお稽古を重ねてきた成果を見せる発表会ですので、どなたも趣向を凝らした美しい着物をその日のために準備されています。

現在の観世能楽堂は銀座六丁目の商業ビルの地下にあり、囃子方の楽屋は奥まったところにありますが、私が研修生の時は渋谷の松濤に能楽堂がありました。

 そこでは囃子方の楽屋は、ちょうど楽屋口を入って一番手前。働きとしてお手伝いに伺っている時はしばしば廊下に出ていることがありました。舞台から聞こえてくる謡に耳をすませ、今はどのあたりを謡っているかを確認するように先生から言われるからです。私が立っていたところは、ちょうどおシテ方の部屋へと続く廊下の端のあたりでした。そのため、自分の出番が近くなって楽屋に入ってきた、華やかな着物姿の皆さんが歩いていく後ろ姿を見ることになるポジション。

 廊下で次々に目の前を通り過ぎては遠ざかっていく着物姿の人々。呉服屋さんの展示会よりも遥かにバリエーションに富んでいて、ため息が出るくらい美しい着物や帯をうっとりと眺めていたのを思い出します。多くの方が発表会で舞う、あるいは謡う曲に合わせて着物の色や柄、帯を選んできているというのも、段々とお稽古や楽屋働きで能の曲について詳しくなるうちに、より楽しめるように。着物を着る方の個性と、曲の個性とが着物の着こなしに表現されていました。

 現在は喫煙室がある能楽堂が多いですが、研修生だったころはまだ分煙が進んでいない時期でしたので、楽屋の副流煙に悩まされたり、朝から晩まで楽屋で正座して足がだるくてたまらなかったり、着物のたたみ方や楽屋での作法で先生からたびたび怒られたり…そんな中でも何度も楽屋に伺ううちに、他の流儀の先生の中には声をかけてくださる方もいらっしゃいました。話しかけられると、緊張するけどやっぱり嬉しい。そんな時期でした。

桜前線、春分打初め会に春の雨。

 昨日は横浜能楽堂にて、春分打初め会でした。

暖かな陽気の中、もちろんソーシャルディスタンスに気をつけながら行いました。

1月にいつも行っていたのを3月に延期しての実施です。

春らしい素敵なお着物の方を目にすると、気持ちまでが華やぎました。

今日は雨の日曜日、お天気が土日逆でなくてよかった…。

窓から少しずつ咲いている桜を見るのも良いものです。

さて、金曜・土曜と仕事をして、季節の変わり目になってやることといえば…

着物の整理と手入れ。

冬の間さんざん着たウールの着物を洗って、最近汚れが目立ってきた襦袢の襟を洗って、この間の稽古の時に気がついた、稽古着のお尻のほつれを繕って(紋付きもお尻のあたりは要注意)…大変だから、少しずつやればいいかな。。。

こうして色々ためてしまう前に、マメにやることが大事。ずぼらだと後で大変だということをつくづく感じています。

フランス語解説付きワークショップにチャレンジしました。

 本日夕方、六本木ストライプハウスギャラリーにて一調「桜川」を打たせていただきました。

私の友人であり、フランス語学習の先生でもある、空間芸術家マリージョゼ・メドヴィエールさんの作品展の中で開催といういつもとは違う空間でのプチ・ワークショップ。

日頃のフランス語学習を活かそう!ということでフランス語で「桜川」の解説文を作り、添削してもらい、フランス人の方もいらっしゃるということで、いざ!……と、思ったらフランス勢は当日来られないとのことでした(T T)

兎も角も、せっかくなので能「桜川」のストーリーを一通りフランス語朗読。

いらっしゃった方に話しかけるようにと考えていた部分は省略しました(みなさん日本の方ですし、いきなりフランス語で話しかけられても皆さん困惑すると思ったので)。

能のイメージも取り入れての作品と金春流シテ方柏崎真由子さんの謡が響く中での一調(いつもの小鼓の手よりもかなり特殊な手をいろいろと打ちます。普通の独鼓にくらべてかなり重い扱い)でした。

 本物の桜もだんだんと咲き始めています、来週以降には東京でもあちこちで本当の桜川が見られそうです。

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Comme des fleurs de cerisier…

 

 

能楽研修生だった頃 ⑫

〜研修2年目が始まって〜

 3月の能楽研鑽会で無事それぞれの初舞台を終えた私たちは、春休みをはさんで2年目の研修を開始しました。

1年目との違いを思い出そうとすると難しいのですが、楽屋働きが去年よりも増えたり、お稽古の内容が1年目は独鼓が多かったのが、舞囃子をいろいろ稽古するようになったり、確か後見で初めて舞台の先生の後ろに座らせてもらったのもこの頃だった気がします(ここらへんの記憶は不確か)。自分が皷を打つわけではないのに、緊張のあまり国立能楽堂の切戸口から舞台に出る時に思い切り頭をぶつけてすごい音がしたことは覚えています…(切戸口を使ったのはこの時が初めてではありません)。稽古や休日の働きが増えたため、アルバイト先もパン屋さんから新宿の某老舗カレー屋さんに変更しました。

 当時の写真が残っているのですが、今見ると我ながら幼い顔をしてるなあ、と思います。

銀行員時代のほうが顔つきは老けていたかも。

能楽研修生はアンチエイジング効果あり?ダイエット効果もあるような(その話は改めて)

この頃はまだ、学生時代の友人&銀行員時代の知り合いと会うことも結構ありました。

友人たちの仕事の話などを聞いていると、今の自分が学生でもなく、社会人でもなく中途半端な存在に思えて不安になりました。

研修は6年間、まだまだ先は長い。

銀行を辞める時、同期の行員に言われたことが頭をよぎります。

「岡本さん、その研修所出る時には30過ぎてるよね…」

(言外に、「そんな年でそんなことやっていて大丈夫?」というニュアンス)

能楽の研修を終えて、30過ぎなのに能楽師になれなかったらどうしよう…。

お囃子のお稽古では厳しく叱る先生も中にはいらっしゃいます。

「やめたいやつは、やめちまえ!」

と怒鳴られるたびに、やめたくない、やめたくないけど…という苦しみがしばらく続きました。

桜と舞台告知

 先週、家の近くの川沿いの桜に花が数輪咲いているのを見つけ

これから一気に咲くかな?というところで昨日の寒さ。

桜川ワールドになるまでにまだ少し我慢が必要なようです。

雨で野外の舞台も中止ということで、のんびりと帰ってきました。

明日、3月15日からは六本木のストライプハウスギャラリーにて知人の展示が始まります。

striped-house.com

 

19日の夕方に私が一調を打つところです。数日中に展示を見て打ち合わせをしてくる予定。

一調のお稽古もですが、来場された方に渡す予定の説明文にフランス語訳をつけることになり、そちらも四苦八苦。言い出したのは自分なので自業自得ですが(汗)

再来週末は舞台もあります。忙しい、でも嬉しい。

お時間のある方は是非起こしください。

 

・能楽「桜川」の世界 in 六本木

日時:3月19日(金)17:45開始(一調の演奏は18時ころの予定です)

場所:六本木ストライプハウスギャラリー(地下鉄六本木駅3番出口より徒歩4分)

宝生流春の女流能

日時:3月28日(日)12時開始(初番「志賀」を打たせていただきます)

場所:宝生能楽堂(JR水道橋駅より徒歩)

 

http://www.hosho.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/03/2021%E5%B9%B43%E6%9C%88%E5%A5%B3%E6%B5%81%E8%83%BD.pdf

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昨日は雨空でした。

 

本日は青翔会でした。

 久しぶりの国立能楽堂の舞台で舞囃子「百萬」を打たせていただきました。

申合せも本番も、思ったように打てなかったところはたくさんありますが、

舞台で鼓を打つことで、自分の中でもやっと春が来たような気持ちになります。

コロナ以前は、舞囃子は能を一番打つよりもずっと短いこともあり、あまり意識をせずに打っていたこともありました。

舞囃子でも、そして例えどこで打つとしても、1番1番を大切に打っていきたい。

コロナ禍で自分の中での舞台の存在の大きさに改めて気が付きました。

まだまだ緊急事態宣言が続いておりますが、能楽堂の楽屋も見所も感染対策に留意して、公演の前後最中に職員の皆さんが気を配ってくださいました。

こうして支えてくれる人たちの存在もあらためて大切だと思います。

そして何より、舞台にお越しいただきました皆様にお礼申し上げます。